「交通事故調書の開示と公正な裁きを求める会」活動の趣意
私達は、交通事故の被害当事者(被害者・遺族)に対して、
交通事故調書(実況見分調書、加害者証言調書、目撃者証言調書等)が捜査段階の早期の時点で開示されるよう求めます。
また、一方の偏った証言や捜査機関における誤った判断により、適正な罪名での裁判が行われない事例が多い事から
適正な罪名による公正な裁きが行われるための働きかけ等を行います。
1.事故後に被害者・遺族が遭遇する状況
交通事故の被害者・遺族となってしまった私達は、事故の原因・真相がどのようなものであったかを当事者でありながら知ることが出来ません。
それは、不幸にも亡くなってしまったり重度の障害を被って、事実を伝える術も無くなってしまった家族から真相を聞けないばかりか、加害者はもとより捜査機関からの詳しい説明を受けることもないからです。
交通事故の被害当事者となってしまった時、私達は事故の態様とその重大な結果から、公正な捜査のもとに起訴処分がなされ、公判で真相が明らかにされると信じて疑いません。
しかし、多くの事故が被害当事者の知らないところで不起訴となったり、たとえ起訴されて公判になったとしても加害者の一方的な証言に基づく事故調書だけが証拠とされて、真相とはかけ離れた「事実」で裁かれることが多いのです。
大切な家族の命を失った悲しみと苦しみに暮れる遺族や被害者家族は、どのような根拠で起訴・不起訴となったのかの事由さえ知ることが出来ず、 事故の真相を知ることが出来ないことで被害者の名誉と尊厳が傷つけられることに、著しい不条理を感じて悩み続けるのです。
2.交通事故被害者・遺族を取り巻く現状
警察および検察庁の捜査機関では、交通事故被害者・遺族に交通事故調書を開示しない理由を、
刑事訴訟法の第47条「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。但し、公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」の条文規定に従っているとしています。
また、交通事故の捜査は警察の専管事項となっており、労災事故や医療事故のように被害者・遺族が証拠を保全することも出来ず、調書を開示しない理由を加害者や目撃者等のプライバシー保護とされることも常です。
平成20年12月1日から,犯罪被害者等の保護・支援のための新たな制度として「被害者参加制度」が始まったことにより
「起訴され被害者参加制度を行使する被害者等」は、『第一回公判前』に調書を見ることが可能となりましたが以外においては、処分決定後もしくは、従来通り「第一回公判後」でなければ、調書を見ることができません。
同じ交通事故被害者でも、調書の開示時期が異なる事態も発生しているのです。
また、加害者には不都合な証拠については提出を不同意にする権利も担保されています。
一方で、起訴が確定し公判請求をした場合、加害者側だけが公判以前に事故調書を入手出来るばかりか、裁判員裁判対象事故に対しては、
平成17年11月の改正刑事訴訟法施行で導入された「公判前整理手続き」が行なわれますが「密室非公開」で行われるその手続きに被害者は入ることはできず、
蚊帳の外に置かれますが一方その場に、加害者は出席でき、採用する証拠や証人等についての話し合いを行い、公判日程もこの場で決めてしまいます。
平成21年度には「裁判員裁判」が始まり、裁判員の負担軽減(裁判の連日的開廷)、わかりやすい裁判のため、
今まで公の場で行なわれてきたことが密室行なわれ、そこで証拠の同意・不同意が決められるのですが、
その手続きには被害者等の参加は認められていませんが、加害者本人が参加することはできます。
公判前整理手続を経た事件は、やむを得ない事由により公判前整理手続で証拠請求できなかった証拠を除いては証拠調請求できません。
被害者等の知る権利が、奪われてしまっているのです被害当事者が"せめて公判で真相を"と望んでいても、不同意にされた刑事記録が開示されることはありません
不起訴事件に至っては、被害者等の方々に対する不起訴記録の開示については、
平成16年5月31日付けで民事裁判所から不起訴記録に関する文書送付嘱託がなされた場合には刑事訴訟法第47条の趣旨を踏まえつつ,被害者等の保護等の観点と開示により関係者のプライバシー等を侵害するおそれや捜査・公判に支障を生ずるおそれの有無等を個別具体的に勘案し,相当と認められる範囲で,弾力的な運用を行うという条件付きであり、
また近時,被害者等の方々からは,被害を受けた事件の内容を知りたいとの強い要望により、被害者等の保護をより十全なものとするため,
従来の指針に加え,不起訴記録については,被害者等の方々の「事件の内容を知ること」などを目的としての客観的証拠については「原則として閲覧を認める」べきとして
平成20年11月19日付けで全国の検察庁に通達を出し、同年12月1日から実施されてはいますが調書の開示が、不起訴処分決定後では遅すぎるのです。
このように交通事故の被害当事者は不公正な扱いで処遇され、一方的に真相を知る権利を剥奪されているのです。
3.交通事故調書の早期開示の要請
情報開示請求権と犯罪被害者の権利の確保は、国民が共有すべき最低限の権利です。
警察の捜査のもとで作成される交通事故調書が、検察庁に送致される前の早期の段階で当事者に開示される仕組みは、
刑事訴訟法で言う"公益上の必要その他の事由"を侵すものではないはずです。
実況見分調書など「客観的証拠」を開示しても、何ら問題があるとは思えません。
早期の調書開示の実現は、予断を持った捜査を監視する役割や捜査の透明性・公平性を確保するという効用があり、
刑事裁判と民事裁判とでの事故態様の判断が著しく異なるといった不条理を無くし、裁判の迅速化にも効果があると思われます。
また、欧米諸国では事故後の遺族被害者に対する捜査情報開示が日本に比べ大幅に進んでおり、
事故レポートとして事故発生から2週間程で開示される国もあります。これらは被害者・遺族にとって当然の権利であることに基づいているのです。
以上をふまえて、
被害当事者に対して、被害者の権利行使や公正な裁きが為されるよう活動していきます。